「私の標本箱から」

1.静岡県庵原郡富士川町野田山 ♂ 1968年4月2日採集

静岡県庵原郡富士川町野田産

京浜昆虫同好会から出版された「関東周辺蝶類採集案内」と言う本があった。これに大丸山と言う地名が登場する。中を読むと、ここにはギフチョウが多産する書かれていた。これは一度は行かなければならないと思った。最寄の駅は、東海道線の岩渕駅(現富士川駅)と言うことであった。当時、横浜の戸塚と言うところに住んでいた私は、ここなら何とか日帰りで行けそうだと考えた。昭和42、43 年頃の話である。随分昔の話である。

朝、5時に戸塚を出発。当時、湘南電車は戸塚に停車しなかったので、横須賀線に乗り、大船で下り沼津行きに乗り換える。湘南電車は海岸線を軽快に走る。天気が良ければ、日の出が拝める。美しい。しかし、このあたりで天気が良くても、沼津に到着する頃にはドン曇何てこともしばしばあった。戸塚から約3時間、やっと、岩渕駅に到着する。

岩淵駅からは、野田山と言う道標に従って進む。始めてきたときは、大丸山に行くのに野田山と言う道標なのですごく不安であった。それに加えて、最初のうちはみかん畑の中の道が延々と続くので更に不安が募った。駅から歩いて約1時間、やっと道の周りに雑木林が現れる。そうこうするうちに広場に到着する。当時、この広場で子供たちが野球かなんかをして楽しんでいたこともあった。

この広場から道は二手に分かれている。右の道を行くと山すそを通って、みかん畑へと下っていく。しかし、その途中には伐採斜面があって、そこにギフチョウがたくさん飛んでいた。右手の高い山が恐らく金丸山であったであろう。この伐採斜面では、交尾も確認している。この斜面を過ぎると大きな杉林の中の道となり、カンアオイはたくさんあったが、ギフチョウは殆ど見ることがなかった。更に、下るとみかん畑になってしまう。

広場から左手の道を行くと、急な登り道となる。約30分間ほど登ると尾根に到着する。この尾根にもギフチョウが多い。尾根を左に行くと、背の低い杉林が点々とあり、ギフチョウがいた。どんどん進むと更に急な登りになり山頂に到着する。この山頂が恐らく大丸山であったであろう。尾根を右手に行くと、大きな杉林の中の道となり、ギフチョウは見られるが少なかった。

どこを指して野田山と言うのかは良く知らない。恐らく、金丸山、大丸山のあるこの一帯を指しているのであろう。当時、市町村単位というのは余り重要ではなかった。しかし、現在、ギフチョウのラベルを語るときにこの市町村単位というのが結構大きな要素になっている。不幸なことに大丸山の手前に富士川町と蒲原町の境界がある。今なら、よく位置を確認してどちらの町で採集したかを正確に把握するであろう。しかし、当時はそんなことはどうでもよかった。とにかく野田山と言うところさえはっきりしていればそれでよかったのだ。この標本は一応富士川町産としてある。しかし、ひょっとしたら蒲原町かもしれない。いずれにせよ、同じ個体群であることだけは確かだ。

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